2010年2月14日日曜日

東北大学の常温核融合研究

昨年(2009年)の12月18日に東北大学電子光理学研究センターで「金属-水素系核現象研究」のミニ研究会が開かれていたようです。以下のPDFにプログラムが載っていました。東北大学での常温核融合の研究活動内容を全く知らなかったので、少しググってみました。

http://www.lns.tohoku.ac.jp/forusers/ws20091218r2.pdf

上記のプログラムを見ると、俗称の「常温核融合」という言葉は使われていませんが、常温核融合に深く関わる研究発表が行われていたようです。

■引用開始
1.はじめに 笠木治郎太 (東北大学) (11:00-11:10)

2.液体金属 Li・重陽子ビーム照射における諸現象 (11:10-12:10)座長:成田 晋也 (岩手大学)
  • 笠木治郎太(東北大学)「液体Li標的による Li+p,d 反応」(25)
  • 池上 栄胤(ウプサラ大学)「液体金属リチウム中で観測した重水素分子イオンによるブレーク・イーブン核融合」(35)

昼食(12:10-午後 1:20)

3.ナノPd-水素・重水素吸蔵における諸現象 (1:20-3:50) 座長:福原 幹夫 (東北大学)
  • 北村 晃(神戸大学)「Pd・ZrO2ナノパウダの水素吸蔵による発熱と放射線計測」(30)  コメント:核理研 (10)
  • 東 博純、本廣 友美 (豊田中研)「Pd微粒子系の水素・重水素吸収特性と発熱現象」(30)
  • 山崎 敏光(理研)「Pd-水素系の異常現象」(30)
  • 福谷 克之、米村 博樹(東京大学)「Pd膜,Pdクラスター,Pd単結晶への水素吸収と水素化過程」(50)

コーヒーブレーク(3:50-4:10)

4.Pd 薄膜・重水素ガス透過における諸現象 (4:10-5:50) 座長:笠木 治郎太 (東北大学)
  •  岩村 康弘(三菱重工)「Pd多層膜・重水素ガス透過による核変換」(50)
  •  寺田 靖子(高輝度光科学研究センター)「SPring8での X線実験解析」
  •  成田 晋也 (岩手大学)「Pd多層膜・重水素吸脱蔵および透過実験」(30)  コメント:神戸大学、豊田中研(20)
■引用終了

開会の言葉を述べられている笠木治郎太博士は、東北大学の電子光理学研究センターの施設長をされており、研究分野紹介のページには以下のような紹介が載っています。

■引用開始
核物理学・凝縮系核科学
金属固体、液体という凝縮系での低エネルギー核融合反応を研究しています。核力が短距離力のため、核融合反応は原子核どうしが接触しないと起きません。超低エネルギーでは原子核間の電気的な反発力が大きいため原子核どうしは接触できず、核融合は量子力学的なトンネル効果により起こりえます。そのため核融合の反応率はエネルギーの減少にともない指数関数的に減少します。原子核を取り巻く物理的、化学的環境により反応率を変化させることができるかどうかを調べるため、低エネルギー重陽子を用いた核融合反応の反応率を系統的に測定しています。
研究者:笠木 治郎太
■引用終了

笠木博士の執筆された論文・文献をJ-GLOBALで探すと、例えば以下のような文献が挙がっており、長年にわたって常温核融合の研究に取り組まれている事が分かります。


<常温核融合は検証されたのか> 高速荷電粒子の発生 応用物理 62/7, 710 1993 (その他)

固体金属内での核融合反応 日本科学技術振興財団 科学技術館 日本の科学と技術 35/, 34 1994 (学術雑誌)

ミニレビュー、低エネルギー重陽子照射による金属中での異常核反応 日本アイソトープ協会 RADIOISOTOPES 46/8, 600-603 1997 (その他)

低温核融合とサイエンス 東京化学同人 現代化学 /376, 22-24 2002 (学術雑誌)

固体金属中の核融合:金属は核反応の特殊環境か? 日本物理学会 日本物理学会誌 BUTSURI 58/, 190-194 2003 (その他)


また、メンバー一覧を見ると、「凝縮系核科学」を研究されている学生やOB&OGの方々が載っていて、若い研究者が活躍されている様子が伺えます。以下、メンバー一覧から凝縮系核科学を専門とされている方々のお名前を抜き出してみました。

研究者

名前
名前 (英語表記)
職名
専門分野
電子メール
電話
笠木 治郎太Jirohta KASAGI教授、施設長核物理学・凝縮系核科学kasagi3420東北大研究者紹介
王強Qiang Wang客員研究員核物理学・凝縮系核科学qwang3414

学生

名前
名前 (英語表記)
学年
所属グループ
電子メール
電話
鳥谷部 祐Yu TORIYABE博士課程3年核物理学・凝縮系核科学toriyabe3417
吉田 英二Eiji YOSHIDA修士課程2年核物理学・凝縮系核科学yoshida3417
方开洪Fang Kai Hong研究生核物理学・凝縮系核科学fang3417

OB&OG

名前
名前 (英語表記)
最終学歴、職名
専門分野
学位論文
就職先、転出先
米村 博樹Hiroki YONEMURA博士課程3年核物理学・凝縮系核科学博士論文2008年4月 東京大学生産技術研究所へ、2009年3月学位取得
中川 明憲Akinori NAKAGAWA修士課程2年核物理学・凝縮系核科学修士論文2008年4月 日本原子力研究開発機構
菅原 崇宏Takahiro SUGAWARA修士課程2年核物理学・凝縮系核科学修士論文2009年4月 就職


若い研究者の方々が良い環境で研究できるよう、世の中の認知が高まると良いですね。

以上

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