2015年1月3日土曜日

ヴィソツキー博士による微生物による元素変換実験(ICCF-18の発表から)

2013年に開かれた国際常温核融合学会第18回大会(ICCF-18)にで、ウクライナのヴィソツキー博士が、微生物による元素転換実験についての発表を行いました。この資料は以下に公開されています。

https://mospace.umsystem.edu/xmlui/bitstream/handle/10355/36823/TransmutationStableRadioactivePresentation.pdf 
Transmutation of Stable and Radioactive Isotopes in Biological Systems (short prehistory, phenomenology, experiments, reasons and perspectives)
Vladimir I. Vysotskii Kiev National Shevchenko University, Kiev, Ukraine
Alla A. Kornilova Moscow State University, Moscow, Russia
講演ビデオは以下にあります(が、聞き取りが難しくて見てません・・^^;)。


この発表は、これまでのヴィソツキー博士のBiological Transmutationの研究成果をまとめたもののようで、たいへん貴重な資料だと思います。以下に私の感想を交えつつ簡単に紹介します。

微生物による元素変換は、放射性物質にのみに起こるだけでなく、安定した元素でも観測されているとのこと。色々な実験の改善を経て、22頁の記述によるとマンガン55から鉄57への変換実験では、1グラムあたり10マイクロミリグラムと相当な量の鉄57が検出されてるようです。
The total mass of Fe-57 isotopes that was created is about 10 mg per each g of dried biological substance or by 20 times more than in the case of "one-line" culture.
23頁には、分かりやすい元素分析の結果グラフが載っています。Fe57(鉄57)の量が増える一方で、Mn55(マンガン55)の量が減ってる事を示しています。


この結果は、MCT (microbial catalyst-transmutator) と著者が呼んでいる色々な細菌と元素の複合体によって得られています。なぜ、単一種の細菌ではなく、複雑な系を用いるのか不思議だったのですが、その理由も17~18頁に書いてありました。以前は単一種の細菌を使っていたらしいのですが、それよりもMCTの方が効果が大きく、かつ、長期間実験可能、というのが理由のようです。面白いですね。



そして、28頁から、原子炉で放射能汚染された水に対してMCTを使って、放射線低減効果を検証した結果が出ています。非常に重要な結果だと思います。

29頁(下図)には、原子炉から取り出して10日経った放射能汚染水のガンマ線のスペクトルが示されています。様々な核種が含まれている事が分かります。


30頁は処理のフローチャートです。といっても、一方は水のままで、他方はMCTを適用するという単純な構図です。


31頁に上記の2つの水の放射線を示すグラフが出ています(横軸は経過日数で、5日毎に計測しています)。何も加えていないQcontrolに対してMCTを加えたQcultureの方が放射線の低減が大きくなっているのが分かります。最初の10日間は両者に殆ど差がないのも面白いところです。


そして、次に出てくるのが、以前にも紹介したCs137の放射線低減実験です。33頁に実験のフローチャートが示されています。対照系2種類を含む8種類のケースで放射線を計測しています。

結果は以下の通り。MCTを混ぜたケースでは、その他の添加物(NaClやCaCO3)に応じて違いがあるものの、Cs137の半減期30年よりずっと速いペースで放射線が弱まっています。最大の効果が得られたケースでは、半減期は約310日と観測されており、通常より35倍速いペースで放射線が弱まっています。

最後に、39頁にある重要な文章を引用します(和訳は引用者がつけました)。


The presented results show perspectives of use of the effect of stable and radioactive isotopes transmutation in biological systems for natural and industrial applications.
実験結果は、自然界や産業にとって、生態系の中で安定同位体および放射性同位体へ与える影響を利用できる展望を示しています。
These results can give the answer to the question of the reasons of abnormal accelerated decrease of environmental radioactivity in some isolated areas inside Chernobyl accident zone with initial high level of radiation pollution
これらの結果は、初期に放射線汚染が高水準であったチェルノブイリ事故地帯の幾つかの孤立した地域で、環境放射線が異常な速度で減少した謎への答えなのかもしれません。 
この事実の詳細を把握できていませんが、もし本当なら、福島原発災害で放射能に国土を汚染された日本にとっても大きな福音になるでしょう。こういった研究にはもっと予算をつけて推進して欲しいものだと思います。

以上

3 件のコメント:

  1. 興味深いお話を有難うございます。30年ほど前、小田切瑞穂という理論物理学者が、元素は高温高圧ではなく、そーっとくっつけてやると容易に変換する、というような話しをしていました。EM農法など、微生物を大いに活用する農法で、放射線が減少することなどから、元素を固定不変なものとみるのはマチガイのような気がします。

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  2. 「1グラムあたり10マイクログラムと相当な量の鉄57が検出」
    とあるところは、英文では10ミリグラムとあるようですね。

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    1. ご指摘ありがとうございました。今になってコメントに気づきました。本文を修正します。

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